観光でも登山でもない。生活圏の延長にある非日常を、歩いて。
神戸といえば三宮、異人館、ハーバーランド。そんなルートから少し外れて、神戸・兵庫区の山の方へ歩いてみる。目指すのは烏原貯水池(からすはらちょすいち)。地元では「水源地」と呼ばれる、明治38年竣工の人工湖。街から坂を登り、湖のほとりで一休み、レコードを聴きながら余韻に浸る。そんな1日。
街から山へ、境界線を越える
五十段階段は、街と山の境界線だ。神戸市営地下鉄の湊川公園駅、神鉄の湊川駅から徒歩10〜15分。あるいは市バス7系統の「石井橋」停留所から3〜5分ほど歩くと、階段の入り口が見えてくる。
登る前は躊躇したが、あっという間に頂上に。

50段の階段を登るだけで、視界がひらける。
街並みの向こうに、ポートタワーが顔をのぞかせる。
「なんでこんなところに?」
岩肌に沿って道を進むと、突然、瓦屋根の古民家が現れる。

正直、最初に出た言葉はこれだった。
「なんでこんなところに?」
周囲は住宅地でも観光地でもない。店があってもおかしくない理由が、風景からまったく読み取れない。
この時点では開いているかも分からず、ひとまず通過。
神戸の水源地へ
さらに進むと、天王橋が現れる。

つたや苔がコンクリートを覆い、橋は森に溶け込みつつある。
手入れされた遺構というより、長い時間をそのまま引き受けてきた橋だ。

この天王橋と、この先の烏原貯水池(立ヶ畑堰堤)は、経済産業省が認定する「近代化産業遺産」に指定されている。観光地としてではなく、神戸の暮らしを支えてきたインフラとして、今も静かに使われ続けている。
ここまで来ると、もう完全に日常から離れている。街でも山でもない、その間の静かな場所だ。
そして、烏原貯水池に到着する。

市街地から歩いてきたとは思えない静けさが広がる。水面は穏やかで、周囲を山が囲む。人工物と自然が、絶妙なバランスで共存している。
この貯水池を支える立ヶ畑堰堤は、明治期に築かれたアーチ式のコンクリート堰堤だ。谷の地形に沿って描かれた曲線は、機能を突き詰めた結果としての美しさを持っている。


取水塔の入口には「養而不窮」の文字。
養えども、窮まらず。ここが長いあいだ、神戸の暮らしを支えてきたことを、静かに語っている。

周囲には「水と森の回遊路」と呼ばれる周遊道が整備され、市民の散策路として親しまれている。地元では「烏原貯水池」よりも、ただ単に「水源地」と呼ばれることが多い。
戻って、一杯
歩いたあとは、気になっていたレザボアへ戻る。


古民家を改装した店内で、自家製シロップを使用したライムビールを一杯。店主がレコードをかけてくれる。


店主や他のお客さんと話をしながら、レコードを聴く。窓の外には、さっきまで歩いていた道が見える。

街のすぐ裏を歩いただけなのに、少し遠くへ行ってきた気分になる。
アクセス
五十段階段の麓までは、神戸市営地下鉄「湊川公園駅」または神鉄「湊川駅」から徒歩20〜25分ほど。市バス7系統「石井橋」停留所からなら、3〜5分で到着する。
レザボアへは、五十段階段を登るルートのほか、坂道をゆるやかに迂回する道もある。店側も坂道ルートを勧めており、散歩の流れで向かうなら、こちらの方が歩きやすい。
五十段階段から烏原貯水池までは、片道10〜15分。
午後から歩き始めて、水源地をひと回りし、夕方にレザボアで一杯。街に戻る前に余韻を挟む、このくらいのペースがちょうどいい。
立ち寄りスポット 五十段階段 → 天王橋 → 烏原貯水池(水源地)→ レザボア
まとめ
烏原貯水池は、わざわざ目的地として訪れる場所ではないかもしれない。でも、街を少しだけ外れて歩いてみると、神戸にはまだ「生活のすぐ裏にある非日常」が残っていることに気づく。
階段を登り、渡れない橋の前に立ち、静かな水面を眺めて、坂の途中で一杯。観光でも登山でもない、ただ歩いただけの時間が、思った以上に記憶に残る。
この街の面白さは、有名なスポットやイベントだけではない。
少し回り道をすることで見えてくる風景や、人の営みの中にこそ、神戸らしさがある。
この街を盛り上げる人の話も
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