JR三ノ宮駅から東へ歩を進め、少し落ち着いた空気が流れる二宮エリア。飲食店が点在するこの街の一角に、ひときわ熱い活気を放つ店があります。
その名も 「焼肉道場 てっちゃん」。
今や世界を舞台に戦うトップボクサーやプロアスリートたちが、試合前の力を蓄えに、あるいは勝利の美酒を味わいに、わざわざこの場所に足を運びます。

ずっとそばにあった「焼肉」
「母親が15年やってたのかな。ずっと見てきてたし焼肉っていうのは結構イメージがついてた。それでも、自分は焼き肉やる気もなかったし興味がないと言えば興味がなかった。」
そう語る哲司さん。焼肉のルーツは、さらに前の世代にさかのぼります。
母方の祖母は、広島のスクラップ工場の近くで焼肉屋を営んでいました。母親もその店を手伝いながら働き、後に家族で兵庫県へ引っ越し。子育てがひと段落した頃、母親が加古川で焼肉店を始めます。
母親の背中を見て育ったものの、当時は自分が飲食の道に進むとは思ってもいませんでした。
でも、たまたま就職した先がチェーンの焼肉店。そこで働くうちに「焼肉ってすげえな、やるんやったら自分でやりたいな」と魅了され、独立を志すようになります。
店長を経験し、店舗運営を任される立場に。さらに和食の経験も積み、フグの免許を取得するなど、飲食の技術を幅広く身につけていきました。
飲食歴は約10年。
独立を見据えて物件を探していた頃、コロナ禍という激動の時代に二宮と出会います。
「独立した先輩らの話も聞いて、居抜きを探してたんです。焼肉屋って意外と空きがなかったんですけど、たまたまポッとここが出て」
2020年11月、オープン。誰もがやめていく中での船出でした。

週4回通った、レジェンド
オープンから間もない頃、ある常連客がボクシング世界3階級制覇王者 長谷川穂積さんに店を紹介しました。
2021年2月、元世界王者が初来店。
「そっから週4回来られました」
週に4回。レジェンドが、オープンして間もない焼肉屋に通い詰める──哲司さんの肉が、その心を掴みました。
以来、井上尚弥、中谷潤人をはじめ、ボクシング関係者の多くが長谷川さんの紹介で足を運ぶようになります。信頼関係は、次の縁へとつながっていきました。
「井上尚弥さんの時には誰も気づかなかったんです。誰も知らんまま帰りました。僕らだけがもう手震えて」
個室もない二宮の店に、世界4階級制覇王者が座っていたのに、誰も気づかない。
「絶対見たことある人たちが、二宮のこんな僻地に。個室があるようなお店ではない。そういうところにポツンと来られるのは、すごいなと自分自身でも思いますね」
「でもお客さんたちが気を使ってくれてる。だから本当にギャーってならなかったです」

播州牛と「三方よし」
「神戸ビーフの流れも大事やと思うんですけど、兵庫県には埋もれてる美味しい牛がいっぱいある」
そこで哲司さんが取り入れているのが、播州牛です。
「一個上の先輩が加古川で牧場をやってて、そこのお肉が自分でも美味しいなと思って入れてます」
神戸ビーフは確かに素晴らしい。でも、それだけじゃない。兵庫県には、まだ知られていない優れた生産者がたくさんいます。
「これだけ肉を扱う業種が多い中で、何かしら引っかかりがないと、やっぱ結局僕らも埋もれていくし、思ってるところが前に出えへん」
だからこそ、播州牛。美味しいという自分の舌の判断と、兵庫県産という地元へのこだわりと。
「僕らはどうしても一番下っていったらあれやけど。いろんな業者さん、いろんな人が関わってきた中で僕らに到達する。でも、お客さんからしたら僕らが一番上なんで」
生産から流通、そして店へ。その流れの最後にいるからこそ、責任がある。
「お客さんに信用性を取るってなると、やっぱそういったお金だけの問題じゃないんだなって。ここに来たら安心するね、安心してお金払えるっていうたらあれですけど、そういったところが一番必要なのかなと」
信頼できる生産者との繋がり。それが、お客さんへの信頼に繋がっていきます。

「完成させるのは、お客さん」
哲司さんのコンセプトは、極めてシンプルです。
「腹いっぱい飯食ってもらうことが一番。飲食店はそこが大事なんで」
焼肉は、お客さんが8割9割仕事する食べ物。店が完成形で出す料理じゃない。
「いかに簡単に美味しく食べさせるか。しっかりタレと肉が絡まって、白飯を掻っさらう。それが僕は本物やと思ってるから」
シンプルだからこそ、誤魔化しが効かない。本物だからこそ、アスリートたちは何度も足を運ぶのです。

UFC戦士が選んだ肉
「朝倉海くんは僕、UFC行く前から肉提供してるんですよ」
元柔道日本代表、現在はYouTubeでも活躍しているドンマイ川端さんとの繋がりから、2023年8月頃からRIZINで活躍し、UFC参戦を果たした総合格闘家・朝倉海選手にお肉を提供し始めました。
UFC参戦──総合格闘家にとって最高峰の舞台。その大一番を前に、朝倉選手が選んだのは哲司さんが選ぶ肉でした。
「なかなか東京で忙しいし、なかなか会えないけど、色々お話させてもらってます」
井上尚弥、中谷潤人、朝倉海──ボクサー、総合格闘家、そしてオリンピックメダリストまで、世界で戦うアスリートたちが集う店になった今、哲司さんは新たな挑戦を始めました。
それが、信頼を寄せる牧場オーナーと共同開発した 「和牛ハンバーグ」と「和牛タンバーグ」 です。
アスリートたちが欲した希少な部位の旨味を、誰もが自宅で味わえる形に。

一口食べて感じるのは、圧倒的な肉々しさ。ふわふわではなく、しっかりと肉の存在感がある。噛むたびに溢れる肉汁、和牛ならではの甘みと旨味。これは「ハンバーグ」という料理の概念を超えた、肉そのものの味わいでした。
朝倉海選手に「このハンバーグまじで神よ」と言わしめた、本物の味をオンライン限定でお届けしているそうです。
二宮が、もっと面白くなれば
哲司さんの視線は、自分の店だけを見ていません。
「二宮は焼肉屋も韓国料理屋も多いし、ここがちょっとコリアンタウンみたいになったらいいなって。鶴橋までいったらごちゃごちゃなりすぎやけど、長田まで行かなくても、こっちで完結できれば」
商店街の味のある雰囲気の中に、韓国カルチャーが溶け込んでいく未来。
「どうしても8時9時になったら寂しいじゃないですか。二宮はもっと人が呼べるエリアやと思ってるんで。わがわがでやらんと、全体で考えればいいかなと」
一軒の焼肉屋が、街全体を想う。その視線の先に、二宮の未来が見えていました。

井上尚弥が静かに席を立ち、誰も気づかないまま帰っていった夜。哲司さんは手を震わせながら、その背中をそっと見送りました。
個室もない、二宮の路地裏。でも、そこには世界を納得させる「本物」と、すべてを包み込む「道場」の温かさがあります。
「腹いっぱい食ってもらうことが一番」
哲司さんは今日も、極上の肉と白飯で誰かの一日を支えています。
世界王者も、仕事帰りの誰かも。
腹いっぱい食べて、また前を向けるように。
焼肉道場 てっちゃん
- 📍 兵庫県神戸市中央区琴ノ緒町3-2-15 玉屋マンション1F
- 🚃 JR三ノ宮駅東口より徒歩約5分
- 🗓 定休日:不定休
- ⏰ 営業時間
- 月〜土・祝前日|17:00–22:30(L.O. 22:00)
- 日・祝|17:00–22:00(L.O. 21:30)
- 🍖 ジャンル:焼肉
- 📱 Instagram: @yakinikudoujou_tecchan
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朝倉海選手が「神」と評したハンバーグ
- 📱 販売ページ: https://yakinikudojo.base.shop/
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