JR三ノ宮駅山側、レンガ色の壁のビル。その地下1階の飲食店街に、もつ焼きの香ばしい煙が立ち上ります。
2025年10月1日、神戸・元町で飲食店を展開するTOKIの新店舗として誕生した「ホルモン串 トキシラズ」。神戸でホルモンといえば「牛」が定番のこの街で、店長のマキさんが勝負するのは、あえての「豚もつ焼き」です。
「もつ焼き、ホルモン串なんですけど、オーナーのゆうきさんが元々、東京で修行した時にもつ焼き屋で働いてて。で、ここの店舗が焼き鳥屋の居抜きやったんですよ」
炭火で焼き上げるホルモン串を片手に、ホッピーをぐいっと一杯。関東では当たり前のこの光景を、神戸の新しいカルチャーにしたい──そんな想いから始まった挑戦の物語です。
店名の「トキシラズ」には、TOKIをまだ知らない方々に、日常使いで気軽に立ち寄ってもらいたいという願いが込められています。

居抜きの居抜きの居抜きの…
「居抜きの居抜きの居抜きの…らしいっすね」
マキさんが苦笑いしながら語る、この物件の来歴。焼き鳥屋の居抜き物件を契約した時、そこはすさまじい状態だったそうです。
ダクトと天井の茶色いタイル、こびりついた油汚れ。機材は食洗機以外すべて撤去され、床も壁も真っ黒。契約時から「2年後には解体かも…?」と告げられていた物件でした。
強力な洗剤とブラシを手に、開業2週間前から毎日、ひたすら壁を、床を、ダクトを擦り続けました。メンバーも駆けつけて、みんなで汗を流して、少しずつ、確実に、この場所を生まれ変わらせていったのです。
「愛着というか、あんだけやったから流行らせたいって魂が出てきましたね。きれいにできるところは全部やりました」

バスケから飲食へ、たどり着いた場所
「バスケットボールがずっと大好きで。そんなめっちゃすごい選手でもなかったんですけど、バスケを仕事にしたいと思ってプロを目指してました」
社会人クラブチームに所属しながら、当時のBJリーグのトライアウトに挑戦。バイトをしながら、夢を追いかけました。コートに立つ瞬間、仲間とのチームプレー、勝負の緊張感──それがすべてでした。
でも、現実は厳しかった。
「次々とその世代のトップの選手たちが来て、アメリカからもNBAに入れなかった選手が日本に来たりして。もう絶対無理やなって」
夢を諦めました。会社に3〜4年勤めた後、飲食の道へ進みました。最初はバスケ時代にバイトしていた洋食屋に戻りますが、何かが違った。
「でもなんかやりたいことじゃないな、この形じゃないなって」
そんな時、目に飛び込んできたのが、飲食をカッコよく楽しんでいる人たちの姿でした。自分もそうなりたい──そう思って、今のTOKIに入りました。
「だから今、やっぱり一番楽しいですね。やっとやりたいことをやれてる感じで」
かつてはプロの世界を目指していたマキさん。今は、トキシラズで仲間たちと飲食を心の底から楽しんでいます。

自分のスタイルでやったらいい
もつ焼きの焼きについて、マキさんは「素人でした」と笑います。
「だって洋食屋では揚げ物しかやってなかったんで。工場か、って思いながらタイマー4個を駆使して働いてました。焼きなんかは全然知らなくて」
そんなマキさんに、救いの手を差し伸べてくれたのが、神戸・二宮の有名店「焼鳥米澤」の米澤さんでした。
トキシラズのインスタグラムを見て、「何かあったら教えますよ」とオーナーに連絡をくれたそうです。わざわざ仕事終わりに店へ来て、営業が許される夜中の2時ギリギリまで、炭の使い方、火入れ──すべてを教えてくれました。
最初、マキさんは緊張でバクバクでした。
「米澤さん、すごい人だって分かってたから。めっちゃ職人が来るぞって。僕、結構おチャラケというか、距離感ミスったらやばいなって」
ところが、米澤さんの教え方は想像とまったく違ったのです。
「『自分のスタイルでやったらいい』って言ってくれたんです。自分が教えるけど、結局は自分で食べて自分で焼いて自分で完成させていくのだから。ファッションと一緒やなって」
決まりはない。色んな職人がいて、色んなやり方がある。でも、最後は自分のスタイルで──その言葉が、一番腑に落ちたと振り返ります。

「レバーの概念が変わる」──トキシラズのホルモン串
米澤さんから学んだ「自分のスタイル」が、今、一皿一皿に形となって現れています。
その代表格が、看板メニューの「とろレバ」です。
「レバーって、あのネトッとした感じと匂いがちょっと…」という人にこそ、まず食べてほしい一品。
皿の上に並ぶのは、サイコロみたいにカチッと「角が立った」レバー。この角こそが、鮮度の証です。
たっぷりのネギとゴマ油を絡めて口に放り込めば、プリッとした食感の中から甘みがとろけ出します。レバー特有の臭みは一切なく、柔らかさとゴマ油の香りが絡み合います。
気づけばビールが空になって、次はホッピーを頼んでいる──そんな一品です。

「飽きない。あとやっぱお酒と合う。焼き鳥よりももつ焼きの方が、また食べたくなるんですよ」
マキさんが東京で味わったあの感覚を、今、神戸で再現しています。
関西は牛。関東は豚。焼き豚と呼ばれる東京の文化を、ここ神戸から広めたい。
師匠から学んだ「スタイル」。それは、マニュアルではなく、自分の感覚を信じること。そして、お客さんに喜んでもらうために、妥協しないこと。
その想いが、一串一串に込められています。

オープン後も続く、試行錯誤の日々
「オープンの時でも、まだ全然完璧じゃなかったです」
マキさんは、そう振り返ります。
でも、だからこそ、毎日が挑戦です。やりながら修正する。串の差し方を調整する。炭の組み方を試してみる。
「今でも『もっとええやつがあるんちゃうかな』と思いながらやってます」
他に焼きに関して修行はしたのかと尋ねると、「丁稚奉公にでかけました!」と笑います。
実際に店舗で働き、串打ち、炭台のこと、ホルモンの管理方法を学びました。
「でも、焼かせてはもらえなかったですね。それでも、串打ちや炭台、管理方法──見て学んだことが色々あります」
中でも、管理方法へのこだわりは徹底しています。発注できるのは週3日だけ。クーラーボックスで凍らないギリギリの温度を保つことで、あの「角が立った」鮮度を実現しているのです。
実は、もつ焼き修行への道は簡単ではありませんでした。
東京のモデル店舗で3ヶ月修行する計画もありました。オーナーと一緒に15店舗ほどのもつ焼き屋を食べ歩き、そこで見つけたモデル店舗。「マキ、行ってきて」と言われ、「ぜんぜん行きます!」と答えました。
許可を取って東京へ行き、面接を受けました。でも、嘘はつきたくなかった。
「もつ焼きを習いたくて。嘘ついて入って3ヶ月で辞めるのが絶対やりたくなかったので、正直に伝えました。面接の練習もして臨んだんですけど、やっぱり無理って言われましたけどね」

トキシラズに集う人たち
「最初は、僕の好きだけを先行すると、ストリートカルチャーみたいな感じで、ちょっとイケてる人たちが飲むみたいな感じ。でもそうじゃなくて」
今、トキシラズに来ているのは、大学生から会社員まで、めっちゃ幅広い世代の人たちです。
個性的すぎず、ちょうどいい感じのライン。その絶妙なバランスが、新しいお客さんを呼び込んでいます。
「TOKIのお客さんでも、TOKIPAOのお客さんでもない、また新しい感じのお客さんがすごく来てくれます。両方の常連さんも来てくれる」
「TOKIの系列って分からずに来ている人もいて、『系列店あるんですか!』『餃子とジンのアジアンエスニックと居酒屋やってます』『えー行きます!』みたいな」
幅広い世代の客層と向き合うなかで、マキさんの価値観にも変化が生まれています。
より多くの世代に楽しんでもらえる店でありたい──そんな思いが強くなっています。

もつ焼きを、新たな神戸カルチャーに
「トキシラズを通して、もつ焼きの良さ、自分たちの会社の良さも分かってもらえたらいいな」

ホルモンといえば牛の街・神戸で、豚もつ焼きを広める──簡単ではない挑戦。
でも、その方向に進んでいます。
「自分が思い続けていたら、自然とそうなっていくと思ってて」
米澤さんが焼きを教えてくれた。スタッフが「めっちゃ楽しい」と笑いながら働いてくれる。常連さんも新しいお客さんも、ふらっと立ち寄ってくれる。
「しんどいこともありますよ、そりゃあ。でもみんながいるから。刺激もらいますね」

想い続けていたら、現実になっていく。 もつ焼きを、神戸の新しいカルチャーに。 地下の酒場から上がる香ばしい煙──トキシラズの狼煙は、上がったばかりです。
ホルモン串 トキシラズ
- 📍 兵庫県神戸市中央区琴ノ緒町5-3-5 グリーンシャポービル B1F
- 🚃
- 神戸市営地下鉄三宮駅より徒歩1分
- JR三ノ宮駅、阪急電鉄神戸三宮駅より徒歩2分
- 阪神電鉄神戸三宮駅より徒歩3分
- ⏰ 営業時間:月〜土・祝日 17:00-23:00(L.O. 22:30)
- 🗓 定休日:日曜日(月曜日が祝日の場合は営業)
- 📱 Instagram: @tokishirazu
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